[折紙]がスキ!
[折紙]がスキ!
Higashi Katsukawa

[折紙]
がスキ!

中高から自他共に認める「変わり者」として過ごし、東大を目指そうと思った。彼は、表情を変えずに続けて言った。自分に似た変わり者に出逢えそうだったのと、名前が「東」だったからと。ライフワークは、幼稚園時代に始めた折り紙。中学生の頃には本に載っていないオリジナル作品を探求するように。現在では折紙に、現代社会での人間の在り方が表れていると感じると語る東京大学の勝川東さんに話を伺った。

折紙は理論と現実というアンビバレントな営みだと思っている。

勝川東 東京大学 前期教養学部 文科一類[東京大学折紙サークル Orist]

— なにを、している?

創作折紙をしています。創作の過程では、折紙の幾何学的性質を用いながら考えますが、実際の紙にはそれがそのまま現れてはくれません。紙は、理論上は厚みのない平面でも、現実には厚さを持ちます。理論上は折り畳めるのに、現実には厚さがそれを許さなかったり、逆に厚みによって作品が重厚感を持ったりします。同様に厚みが生む誤差によって、作品の形が崩れたり、逆に形が作れたりします。また僕の場合は、頭で考えた折り方や構造を、実際に紙で試しながら創作するのですが、その際、うまくいきそうなことが失敗したり、思いもよらない成功が生まれたりします。このように、理論と現実の狭間を旅するようなプロセスが本当に面白いのです。

— なんで、すき?

折紙は、1枚の紙を折るだけ、という強い制約を伴います。絵や彫刻などと比べると、その表現の幅では敵わないでしょう。しかし、僕はその制約を奥深いと感じるのです。例えば、作品を色分けするために紙の表裏を使う方法を「インサイドアウト」と言います。色を変えられるのは表裏の境目である紙の辺の部分だけなので、作品の構造への最初の制約となります。また、1枚の紙からパーツをいくつも作ろうとすると、それらは相互に干渉しあって、制約となるのです。しかし、そのような制約の重なりの中で、作品を対象に近づけて、また、デフォルメによって対象をも作品に近づけて、いわばその作品の最適解を創作できたときの喜びは格別です。

— これからやりたいこと

制約の重なりの中で必要を満たす。どんな物事にも日々の生活にも通ずることですが、これは創作のプロセスにほかなりません。創作折紙のスキルは、これから生きる上で確実に役立つと思います。ところで僕は折紙に、現代社会での人間の在り方を感じています。現代では、ゲームやネットなど、ある意味での非現実が発達し、その中毒性は社会問題化しています。しかし、紙をいじって喜びを得るという現実の営みを通して、そのような非現実は現実には到底敵わないと実感しています。それは恐らく、私達人間が物理的な意味での現実に心身を置いているからです。現代社会での在り方とは、非現実に没頭せずその現実を第一に楽しむことだと考えます。